生味噌の「麹菌が生きている」は間違い

今回は味噌で活躍する麹菌についてです。

味噌を買う時に、

「この生味噌は麹菌が生きているので冷蔵庫で保存してください」

「麹菌が死なないように高温にならないように注意してください」

という説明書きを見たことはありませんか?

私は生味噌には麹菌が生きていて、麹菌が発酵を進めているものと思っていました。

また味噌作りの際、茹でた大豆を冷まして塩切り麹と混ぜる工程があるのですが、これも熱で麹菌を殺さないためと思っていました。

でも実は正しくないのです。

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麹菌は塩と混ぜるとすぐ死ぬ

なぜかというと、水や塩と混ぜられた時点で、麹菌はすぐに死んでしまうからです。

麹菌は、

水や塩水に仕込むとあっさり死滅し、…

「日本の伝統 発酵の科学」講談社 p89 より

麹菌は非常に弱い生物です。

味噌の発酵・熟成には麹菌が作った酵素を利用している

では麹菌は死滅しているのに味噌の発酵や熟成が進むのはどうしてでしょうか。

それは麹菌が作った酵素が熟成を進めるからです。

麹菌は、

水や塩水に仕込むとあっさり死滅し、その後の熟成過程では酵素だけがじっくり働くことになる。

「日本の伝統 発酵の科学」講談社 p89 より

味噌に限らず、菌の生み出す物質(酵素やガスなど)があれば菌自体はいなくても発酵•熟成は進みます。

ちなみに味噌の熟成には、麹菌の作った酵素だけでなく、塩に耐性のある乳酸菌や酵母も関係します。

味噌仕込み時に大豆を冷ます理由は酵素を壊さないため

味噌作りの際、麹菌がいないなら大豆を茹でたあとに冷まさなくてもいいじゃないか、と思う人がいるかもしれません。

でも冷ます工程は必要です。

酵素はタンパク質の一種で、高温で壊れてしまう(失活)からです。

酵素にはさまざまな種類があり、何度以上で失活するか一概にいうことは難しいですが、50℃を超えると失活し始めるという情報もあります。

このため、なるべく人肌程度まで冷ましてから麹と混ぜる方が良いわけです。

以上、仕込み時の麹菌についてでした。

参考図書

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