発酵と熟成の違い

「発酵」と「熟成」。

似ているようで何となく違う気もしますよね。

ただ色々調べてもどこにもはっきりとした違いが書かれているものが見つからず、ここでは自分なりの「発酵」と「熟成」の違いについて書いていきたいと思います。

(もしおかしな部分がありましたらご指摘ください

目次

最も大きな違いは「味や見た目が大きく変わるかどうか」

「発酵」と「熟成」の違いについを一言で説明すると

「味や見た目が大きく変わるかどうか」

です。

この答えにどう至ったか説明していきます。

まずは発酵と熟成それぞれの意味は見ていきたいと思います。

発酵とは

発酵は、一般的微生物(が作る酵素)によって有機物が分解され人間にとって役立つものが生み出されることです。

微生物のおかげで良いものができるときが「発酵」、台無しになってしまうことが「腐敗」

引用元:日本の伝統 発酵の科学 講談社 p.40

ただし注意したいのが、紅茶や塩辛のように微生物が関わらない場合(自己分解酵素によるもの)も発酵ということがあることです。

熟成とは

熟成は、微生物が作る酵素や自己消化酵素を利用してうまみや風味を向上させることです。

じゅく‐せい【熟成】 の解説

[名](スル)

1 成熟して十分なころあいに達すること。「機運が熟成する」

2 魚肉・獣肉などが酵素の作用により分解され、特殊な風味・うまみが出ること。発酵を終えたあとそのままにし、さらに味をならすこともある。なれ。「味噌が熟成する」

3 物質を適当な温度などの条件のもとに長時間置いて、ゆっくりと化学変化を起こさせること。

出所 デジタル大辞泉

じゅく‐せい【熟成】
〔名〕

① 十分にでき上がること。また、機会が熟すること。成熟。

*米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉三「十月より十一月初めまでに、麦を播き翌年の七八月に至て熟成す」

② 化学物質、配合原料、中間的な半製品などが、特定条件のもとで内部から自然に化学反応を進め、必要とする物理的または化学的性質を獲得していくこと。食品工業、窯業、肥料工業、ビスコース工業などでいう。

③ 動物体の蛋白質、脂肪、グリコーゲンなどが、酵素や微生物の作用により、腐敗せずに適度に分解され、特殊な香味を発すること。なれ。

出所 精選版 日本国語大辞典

自然に含まれる酵素、あるいは細菌の酵素などを利用して、食品にうま味や風味を出す、柔らかくするなど、品質を向上させるための工程をいう。熟成させることを「ねかす」ともいう。英語では一般にエイジングagingという。食品中にはタンパク質、脂質、繊維、糖質などが含まれるが、これらが酵素により、ゆっくりと変化し、各種の味や香りの成分を出し、組織を軟化させるなどする。熟成はゆっくり行わせるほうが、風味のよい食品ができあがる。そのため、低温にする、食塩やアルコールを加える、といったことも行う。また、発酵製品では、主発酵が終わったのち、さらに静置して味をならすのも熟成という。清酒、ビール、ワイン、みそ、しょうゆ、酢、チーズ、塩辛のような発酵品、ウイスキー、ブランデーのような蒸留酒、こねた小麦粉の生地(きじ)、食肉など、多くのものにこの熟成の工程がとられ、品質の向上が図られる。

[河野友美・山口米子]

『佐藤信監修『食品の熟成』(1984・光琳)』

出所 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)

発酵と熟成の比較

以上から、発酵と熟成はどちらも微生物が作る酵素や自己分解酵素によって味を良くすることが共通しています。しかしこれだけでは発酵と熟成の違いは明確にはわかりません。

そこで発酵と呼ばれているものと熟成と呼ばれているものについて見比べてみることにします。

発酵味噌、醤油、日本酒、ぬか漬け、塩辛、紅茶、ビール、ワイン
熟成発酵後の味噌や醤油やワインを寝かせる、熟成肉

すると次のような特徴があることがわかります。

発酵は何かを混ぜているものが多い

紅茶やワインを除き、発酵食品は塩などの材料を混ぜて変化させているものが多いです。

  • 味噌:大豆+塩+麹
  • 醤油:大豆+小麦+塩+麹
  • 日本酒:米+米麹
  • ぬか漬け:塩+ぬか
  • 塩辛:イカや魚の内臓・身+塩

熟成は何も混ぜずにそのまま変化させています。

何かを混ぜる何も混ぜない
発酵味噌、醤油、日本酒、ぬか漬け、塩辛、ビール紅茶、ワイン
熟成発酵後の味噌・醤油・ワイン、熟成肉

変化前が食品としていったん完成されたものかどうか

発酵食品は、発酵前は食品として完成されていません。
たとえば味噌は煮大豆と塩と塩麹を混ぜたものですが、混ぜた時点では食品として食べられることはありません。
ただ紅茶(緑茶)、ワイン(ぶどう)、ぬか漬け(生野菜など)は例外です。

熟成は、変化前はすでに食品として完成されています
たとえば熟成肉は、熟成前の肉の状態で食品として普通に流通しています。

変化前は食品として完成されていない変化前に食品として完成されている
発酵味噌、醤油、日本酒、塩辛、ビール紅茶、ワイン、ぬか漬け
熟成発酵後の味噌・醤油・ワイン、熟成肉

味や見た目の変化の度合い

発酵は味や見た目の大きな変化が起こります。

熟成はそこまで劇的な変化はありません

味や見た目の変化を数字で表すと次のような感じです。

  • 発酵:0→1(違うものを生み出す)
  • 熟成:1→2(今より良くする)

以上から、発酵と熟成の違いは、味や見た目の変化の度合いの違いであるとの結論に至りました。

ネット上やその他の意見は?

発酵と熟成の違いについて次のような意見や考えがあります。

微生物が関わるかどうか

ネット上の情報では微生物が関わるかどうかで使い分けをしている意見が多いです。

  • 微生物が食材を分解⇒発酵
  • 微生物が関わらず、自己分解酵素が食材を分解⇒熟成

ただしこれだけでは説明は難しいです。

まず上記の熟成の説明で引用した辞書に「酵素や微生物の作用」「自然に含まれる酵素、あるいは細菌の酵素などを利用して」と書いているからです。

実際に、味噌の熟成と呼ばれる期間は生きた酵母菌や乳酸菌が味を変化させる重要な要素となっています。

また発酵の説明でも書いたとおり塩辛や紅茶など微生物が関わらず自己分解酵素による変化が発酵と呼ばれることあるからです。

これらのことから微生物の関与による区別は難しいことがわかります。

微生物が直接関わる微生物が直接関わらない
発酵食品ぬか漬け、味噌、醤油、日本酒紅茶、塩辛
熟成発酵後熟成肉

②時間軸の違い

「発酵」はまだ若く、「熟成」は時間が経っているという考えです。

・とりあえず食べられる状態になる時まで⇒「発酵」

・発酵後、さらに時間を置いて味に深みを増す工程⇒「熟成」

でもよく考えると熟成肉は数日でできるので時間軸は関係ないないといえます。

まとめ

発酵と熟成の違いは「味または見た目が大きく変わるかどうか」と私は考えます。

発酵がほぼ別のものに変化するのに対し、熟成はそこまで変わりません。

発酵の特徴:細菌の酵素や自己分解酵素によって、味または見た目を大きく変化させる

熟成の特徴:細菌の酵素や自己分解酵素によって、さらに味を良くするために何も加えず寝かせる

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